牛の受精卵移植の注意点 ④誰がドナー牛を管理するか

市町村や農協単位の酪農家が受精卵組合をつくって、あるいは、仲の良い若手酪農家がシンジケートを結成し、ドナー牛(供卵牛)を購入して採卵することをよく目にします。

ドナー牛を購入するにあたって必ず守っていただきたいことが二つあります。
特に、仲の良い若手酪農家が組んだシンジケートにおいては。

一つは、ドナー牛の飼養管理者を決めておくことです。
ドナー牛は高価ですから、はっきり言ってだれも管理をしたくはないはずです。「俺に管理させろ。」と、手を挙げる人はほとんどなく、たいていは、「俺は管理が下手だから、ドナー牛の管理なんてできないよ。」と言って、逃げにまわるはずです。最後は、おとなしく気の弱い人に押し付けられてしまいます。
ですから、シンジケートでドナー牛を購入すると決めた段階で、飼養管理者を決めておくことを勧めます。ドナー牛が牧場に到着してからでは遅いのです。

二つ目は、“生き物は病気をし死ぬ”という、あたりまえのことを全員で再認識しておくことです。
皆さんの牧場では、時々、ウシが死ぬと思います。その時、皆さんはどう対処するか。たいていは「死んじゃった。」と、冷静に対処していると思います。
しかし、高価なドナー牛が病気をしたり死亡した場合は、そうはいきません。ドナー牛を管理していた酪農家に向かって「お前の管理が下手だからだ。」あるいは「ちゃんと管理をしてたのか。」と、怒りの声をぶつける仲間が必ずでてきます。自分は、管理することを逃げたくせに。それでシンジケートは事実上終わりです。せっかく仲の良い仲間が集まったシンジケートが。
生きているものは必ずいつかは死ぬのです。美人薄命ではありませんが、すばらしいウシほど早く死ぬような感じもします。
ですから、シンジケートを結成するときは、覚書に、「ドナー牛の生死について、管理者の責任は一切問わない。」などの一文を明確に記載しておくべきです。

仲の良い仲間が、管理のことで不仲になることは悲しいものです。心してください。

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