「赤毛ホルスタイン」 について

ホルスタインに、毛の赤いホルスタインがいることは、皆さんもご存知のことでしょう。

主にホルスタイン改良同志会が主催するブラック・アンド・ホワイト・ショーにも、赤毛のホルスタインが出品されています。ブラック・アンド・ホワイトと名うっているショーの名称からいくと面白いですよね。
ホルスタインをブラック・アンド・ホワイトと言うように、純粋のホルスタインは黒毛と白毛の斑紋が正しいのです。

今ではよく見る赤毛のホルスタインですが、以前はホルスタインとは認められず、ホルスタインとして登録することはできませんでした。1978年に登録の規約が変更になり、赤毛ホルスタインもホルスタインとして正式に認められ登録することができるようになりました。

それでは、どのようにして赤毛ホルスタインが生まれたのでしょうか。

赤毛のホルスタインは、ホルスタインの体を大きくするのを目的に、オランダで1844年以降数年間、肉牛のショートホーンを交配したことに始まります。
私が約180年前のオランダ人の思いを推察するには、①ホルスタインの体を大きくすれば、もっと乳がでるのではないか。②乳肉兼用として、肉量を増やそうと思った。のどちらかでしょう。いづれにしても、人間の欲が赤毛のホルスタインを産んだのでしょう。

ショートホーンの赤毛を継いだ赤毛の遺伝子を持ったオスに、能力の高い種雄牛がいたため、その種雄牛が広く使われたことによって世の中に赤毛のホルスタインが広まりました。

図1には、ホルスタインのメスと、ショートホーンのオスとを交配することによって、赤毛のホルスタインが生まれるように書いてありますが、実際には、このように簡単に赤毛のホルスタインができるのではありません。

 

ホルスタインの毛の色は、黒毛のほうが赤毛よりも優勢ですので、ホルスタインの黒毛の優勢遺伝子をブラック(Black)の頭文字から大文字のBとし、劣勢遺伝子の赤毛を小文字のbとします。ここでは、わかりやすくするために、劣勢遺伝子のを赤太字で記載します。
優勢と劣勢の関係から、優勢遺伝子(黒毛)を二つ持つ遺伝子型BB(これを“ホモ”と言います)が純粋の黒毛、優勢遺伝子(黒毛)と劣勢遺伝子(赤毛)を一つづつもつ遺伝子型B(これを“ヘテロ”と言います)は赤毛の遺伝子を持ちますが実際の毛の色は黒毛となり(これを”表現型”といいます)、劣勢遺伝子(赤毛)を二つ持つ遺伝子型bb(これも“ホモ”です)が赤毛となります。

赤毛の遺伝子を一つ持つ遺伝子型Bは、赤毛遺伝子のキャリアーと称されます。
以後、赤毛遺伝子を一つ持つ遺伝子型Bを赤毛キャリアーと表現します。

図2のとおり、純粋の黒毛のホルスタインのメス(BB)と、赤毛のショートホーンのオス(bb)とを交配すると、子供の遺伝子型はすべてBとなり、第二世代はすべて赤毛のキャリーですが、表現型は黒毛となります。

 

 

図3のように、図2で赤毛のキャリアーとなったホルスタインのメス(B)と、赤毛のショートホーン(bb)を交配すると、二分の一の子供がBの赤毛遺伝子のキャリアーとなり、二分の一の子供がbbとなって、初めて赤毛のホルスタインとなります。
つまり、うまくいっても、第三世代目にやっと赤毛のホルスタインがでてくるのです。

 

 

皆さんは、種雄牛を選択するとき、種雄牛が赤毛キャリアーかどうかをそれほど気にしていないと思います。
そのため、表現型も遺伝子型もは黒毛(BB)ですが赤毛キャリアーの種雄牛(B)を交配することによって、図4のように知らず知らずのうちに、自分の牧場に赤毛の遺伝子が入ってきているのです。

 

 

知らず知らずのうちに牧場に入ってきた赤毛遺伝子のキャリアーのメス(B)に表現型は黒毛ですが赤毛遺伝子キャリアーのホルスタインのオス(B)とを交配すると、図5のように、四分の一の子供がBBで純粋の黒毛のホルスタインとなり、二分の一の子供が表現型は黒毛ですが、遺伝子型はBの赤毛遺伝子キャリアーになり、四分の一の子供がbbとなって、赤毛のホルスタインとなります。
このことから、牧場で分娩に立ち会ったとき、突然、赤毛のホルスタインが誕生して驚くことがあるのです。
これは理論的に正しいことなので、間違って赤毛の種雄牛のストローを渡された、とは誤解しないでください。

 

 

次に、赤毛のホルスタインのメスを持っている牧場のかたに説明します。

図6のように、赤毛のホルスタインのメス(bb)に、純粋のホルスタインのオス(BB)を交配すると、すべての子供が赤毛遺伝子キャリアーのBとなり、表現型は黒毛となります。赤毛のホルスタインのメスだからと言って、交配するオスによっては赤毛がでてきませんので、注意してください。

 

 

図7のように、赤毛のメス(bb)に赤毛遺伝子キャリアーのオス(B)を交配すると、半分の子供は赤毛(bb)となりますが、子供の半分は赤毛遺伝子キャリアー(B)となって表現型は黒毛のホルスタインとなります。
つまり、赤毛のメス(bb)に、赤毛キャリアーのオス(B)を交配しても、半分しか赤毛(bb)になりません。

 

 

図8のように、赤毛のホルスタインのメス(bb)に、赤毛のオス(bb)を交配すると、すべての子供が赤毛のホルスタイン(bb)となります。
ですから、どうしても赤毛のホルスタインを取りたいときは、必ず、赤毛のオスであることを確認してから交配してください。

 

 

なお、表現型が赤毛である、遺伝子型bbのホルスタインは、オスもメスも、名号の最後にREDと記載することが、各国のホルスタイン登録規定に定められています。

種雄牛案内(ブルブック)には、赤毛の種雄牛は RED として、赤毛遺伝子キャリアーの種雄牛は、RC(Red Carrier) と確実に記載されていますので、参考にしてください。