牛の受精卵移植の注意点 ②受精卵の使用時期

ホルスタインの受精卵移植についての注意点の一つに、受精卵を使う時期 があります。

ホルスタインの能力は、種雄牛の作出・選抜に対する人工授精所の努力によって、年々向上しています。ですから、ホルスタインの受精卵は、すぐに使わないと時代遅れの受精卵になってしまいます。

図1で説明します。
横軸に年を、縦軸に種雄牛の遺伝能力をとります。
種雄牛の遺伝能力は年々伸びていますので、グラフの横バーのように伸びていきます。図1は説明の図であるため、年々の伸びを一定にしてありますが、実際には、年々の伸びは一定ではありません。
例えば、2019年(青)に採卵した受精卵を、窒素タンクに保管しておいて使用せずに、2022年(赤)に移植したとしますと、3年間で赤矢印の分だけ乳量の少ない時代遅れの受精卵になってしまうのです。

市町村や農協単位の酪農家が受精卵組合をつくって、あるいは、仲の良い若手酪農家がシンジケートを結成してドナー牛(供卵牛)を購入して採卵したり、高価な受精卵を購入したりしているのをよく目にします。しかし、採卵あるいは購入した受精卵が、意外と使われずに窒素タンクに保管されているのが現実です。これは宝の持ち腐れのなにものでもありません。

ホルスタインの受精卵といいましたが、あくまで能力タイプの受精卵です。
ショー・タイプの受精卵は、多少、年月が経過してもそれほど価値は変わりません。なぜならば、体型審査の基準は変わらないからです。
また、黒毛和種の受精卵は、年月がたっても価値は不変です。なぜならば、和牛の肉質の格付けランクはA5が最高でA6のランクがないからです。