「ホルスタインのF1(一代雑種)について考えよう ①」では、F1(一代雑種)の基礎知識について説明しました。
ここでは、ホルスタインのF1がホルスタインの改良に与える影響について考えます。
ホルスタインのF1は、そのほとんどが未経産牛に対して行われています。その理由は、初産牛の分娩を軽くしたいことにあります。
そこで、未経産牛に対する黒毛和種の交配(F1)が、ホルスタインの改良に与える影響について考えてみましょう。
前提条件として、次のようにします。
(1) 初産分娩は 25 ヶ月 (家畜改良事業団「乳用牛群能力検定成績のまとめ」で、
2020年度24.8ケ月のため、計算上25ケ月とする。)
(2) 分娩間隔は 15 ヶ月 (家畜改良事業団「乳用牛群能力検定成績のまとめ」で、
2020年度446日のため、計算上15ケ月とする。)
(3) 妊娠期間は、 10 ヶ月
(4) 初生仔牛のオス・メス比率は 50%
以上の条件でいくと、各産次の授精と分娩の関係は図1のようになります。
交配をホルスタインだけで行うと、オス・メスの比率を50%として、第1子と第2子のどちらかがメスとなりますから、メス仔牛の誕生は第1子と第2子の誕生の平均で32.5ヶ月目となります。(図2 参照)
未経産牛に黒毛和種を交配すると、第1子はF1でホルスタインではありませんから、ホルスタインとしてのメス仔牛の誕生は第2子と第3子の誕生の平均で47.5ヶ月目となります。(図3 参照)
これからわかるように、未経産牛に黒毛和種を交配すると、後継牛として次世代のホルスタインのメス牛が生まれるのに ( 47.5 - 32.5 = )15ヶ月の差がでてきます。
改良とは、世代の更新です。一世代での、この15ヶ月の差は、改良にとっていかに大きなものであることかが理解できると思います。
未経産牛に黒毛和種を交配している限り、永久に欧米には追いつけません。
次に、未経産牛に黒毛和種を交配することの改良への影響を、平均産次の面から考えてみます。
2020年度の平均産次は、次のようになっています。(家畜改良事業団「乳用牛群能力検定成績のまとめ」)
北海道 2.5
都府県 2.5
全 国 2.5 となっています。
未経産牛に黒毛和種を交配すると、1産目がF1となり、平均産次からして残りの産次は1.5産となります。
オス・メスの比率50%からすると、1.5産では確実にメスが取れる保証はないのです。
0.75頭というような、例えば、片足のない不完全なウシはいませんから。
つまり、次世代としての後継牛を残さないで去ってしまうメス牛がたくさんいるということです。これでは改良はできません。
黒毛和種を未経産牛に交配することによって、改良がいかに遅れるかが理解できたと思います。
もちろん、性選別精液を使用すれば、世代交代の時間が短縮されますが、F1をやるかやらないで15ヶ月遅れることは( 40-25=15 )同じです。(図4 参照)
“黒毛和種を交配するな”とは申しません。
黒毛和種を交配するならば、未経産牛を避けて、後継牛を残さない、または、廃用・淘汰を予定している経産牛に交配すべきだ、と言いたいのです。