ホルスタインの育種改良とは、世代交代である

育種改良とはどういうことか、辞典を引いてみると、
三省堂の新明解国語辞典には、「動植物の改良種を作り育てること。」
岩波書店の国語辞典には、「農作物や家畜の改良品種を作り出すこと。」
旺文社の国語辞典には、「家畜や作物の品種を科学的に改良して、すぐれたものを育成すること。」とあります。

私はこの説明に納得はできません。その理由は、世代交代という言葉が抜けているからです。私の辞典では、「動植物を世代交代を繰り返すことによって品種を改良していくこと。」となります。

各都道府県の農業試験場が、地域特産の米や野菜の育種改良に多大の年月を要するのは一年一作のため世代交代に時間がかかるからです。果樹試験場では、一世代が長いため、もっと年月がかかります。畜産試験場では、育種改良はあまりやられておりません。

育種改良が、各社の辞典の説明のように、世代交代を繰り返さないでできてしまうならば、高泌乳能力を持つウシや、共進会(ショー)で上位にランクされる素晴らしい体型をもつウシがすぐにできてしまいます。そんなことはあり得ません。
育種改良は、時間のかかる地道な努力の積み重ねです。

酪農家のかたが注意しなければいけないことが、一つあります。
それは、酪農場では毎月、何頭ものウシに人工授精を行い、何頭ものウシが分娩をしています。そのため、さも育種改良をやっているように感じているかも知れませんが、それは誤解です。
酪農場で毎月行われている人工授精や分娩の半分以上は、世代交代ではなく、兄弟姉妹を増やしているのです。兄弟姉妹は、親からすれば世代交代ですが、全て同じ世代なのです。

親からすると、第一子が最初の次世代です。第二子や第三子は、何年か遅れの同じ次世代です。第一子が、親の血液を最も早く継ぐ次世代です。ですから、酪農家にとっては、ホルスタインの第一子がメスであることが、育種改良の点からして望まれるのです。
このことと、乳牛牧場ではオス牛は必要ないことから、メスだけが産まれる性選別精液(メスが産まれる精液)が販売されているのです。(性選別精液といえども、現在の技術では、メスが産まれる確率は95%程度で、100%ではありません)

誤解しないでほしいのは、第一子が最も早く親の血を継ぐということであって、第一子が最も優れていることではありません。
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