コラム 「ホルスタインの体型の覚え方 ①」 で、ホルスタインの体型は感覚ではなく、「科学的に理詰めで」覚えてください、と申しました。
体型の基礎を「科学的に理詰めで」覚えたら、実践の段階です。
ホルスタインの体型を覚える最も良い方法は、ホルスタイン共進会やブラック・アンド・ホワイト ショー(以後、ホルスタイン・ショー)を見ることだと思います。
その理由は、市町村のホルスタイン・ショーでは各牧場の、各県のホルスタイン・ショーでは各市町村の、全国大会では各県の代表牛が出品されるからです。
ホルスタインの体型を覚えるためには、体型の良いホルスタインをたくさん見ることです。
そのホルスタイン・ショーの見学の仕方ですが、各クラスの審査で、まず自分で体型の良いと思うウシを、20頭くらいの出品頭数ならば3頭を、10頭くらいならば2頭を選ぶのです。
審査員が出品牛から一次選抜をする前に選んでください。審査員が選ぶのを真似して選んではいけません。
自分が選んだウシが、出品頭数20頭くらいの時は、審査員が選んだ上位6頭に何頭、出品頭数が10頭くらいの時は、審査員が選んだ上位4頭に何頭入っているかをみるのです。(表1)
体型の良いウシを見る訓練をしているのですから、選んだウシの順位を付ける必要はありません。
ウシを見る眼が慣れてきて、自分が選んだウシが、審査員が上位に選抜する中に入る確率が高くなってきたら、出品頭数20頭くらいの時は2頭を選び、審査員が選んだ上位4頭に何頭、出品頭数が10頭くらいの時は1頭選び、審査員が選んだ上位2頭に入るかどうかをみるのです。(表2)
この段階で、自分が選んだウシが審査員の選抜上位順位への入賞率が高くなれば、皆さんはウシを見る眼において、胸を張ってもいいでしょう。
よく頑張りました。
審査員の選ぶ順位と自分が選んだ順位とが一致するかどうかは気にする必要はありません。
順位の一致ではなく、審査員と同じウシを選んだか、が重要です。
採点競技(体操・フィギュアスケート・スキーのジャンプ 等)には厳格に定められた審査基準があります。審査員はその審査基準にのっとって審査するのですが、審査員によって多少の見方の相違があるでしょうし、見る場所の違いもあります。そのため、通常、採点競技では、審査の公平を保つため審査員が複数人います。
最近は、野球・サッカー・バレーボールなどで、ビデオによるリプレー検証が取り入れられています。これは、審判が一人のため、判定場所による誤認を防止するためです。
例えば、ある採点競技で5人の審査員がいて 表3 のような採点をしたとします。
各審査員の採点から一番高い点数と一番低い点数とをカットし、中の点数を平均して個人の得点とするのです(表4)。
ホルスタインについても、厳格な「ホルスタイン種雌牛審査標準(日本ホルスタイン登録協会)」が定められており、審査員はその審査標準にのっとって審査します。しかし、ホルスタイン・ショーは審査員が一人のため、他の採点競技よりも審査員の個性がでやすいのです。
もし、同じホルスタイン・ショーで複数人の審査員が別々に審査したら、多分、結果は違ってくるでしょう。
しかし、審査員は「審査標準」にのっとって審査しますので、大きな順位の差にはなりません。
例えば、出品頭数が20頭の場合、1位・2位・3位を、A審査員は出品番号で15・6・11と順位付けしたが、B審査員は11・6・15とし、C審査員は11・15.6としたくらいの差はでるでしょうが、上位の顔ぶれは変わらないのが一般的です。(表5)
BとCの審査員が20位にしたウシをA審査員は2位にした、と言うような大きな差はほとんどありません(表6)。もし、そのような審査をしたとすると、「Aはウシが見れない、との評価がSNSで全国に拡散して、Aさんはそれ以後、ショーの審査員としてショー・リングには立てないでしょう。
ここまで言いきれるのは、審査をする酪農家はあまりいませんが(ホルスタイン・ショーの審査に資格はありませんが)、もちろんウシは見れるのです。酪農家はウシのプロです。
酪農家はおとなしいですから、審査会場でのブーイング等による直接的な非難はしませんが。
しかし、ひどく間違った審査をした人間には二度と審査を依頼しないのは当然の結果です。
このように、審査員の好き嫌いや、審査員の重視する体型部位の差によって、順位に多少の差がでてくるのは、審査員が一人の場合、仕方のないことなのです。しかし、大きな順位の差は絶対にありません。
このことによって、出品牛20頭くらいのとき、皆さんがえらんだ2頭のウシが審査員の選ぶ上位4頭に入っていればいいというのです。
しかし、いくら勉強のためとはいえ、未経産5部に経産6部の11部すべての部の出品牛から3頭を選ぶことは大変です。この部はわからない、などと逃げてしまいがちです。
そこで私は、ウシの体型を早く覚えるためには、一人でなく友達と一緒に観戦し、“友達と、勝ったとき負けたとき、の何か決めごとをして出品牛を見れば”、と提案するのです。
人間、すべての人とはいませんが多くの人は、欲が深く、負けず嫌いです。友達と決めごとをしてやると、友達に負けたくないですから真剣にウシを見るようになり、ウシの体型をより早く覚えていくのです。この部はわからないなどと逃げてしまったら負けですから。
是非とも、ホルスタイン・ショーを見学し、たくさんのウシを見て眼を養ってください。
もっとホルスタインの審査について知りたい方は、日本ホルスタイン登録協会のホームページで「ホルスタイン種雌牛審査標準」を検索してご覧ください。
最後に、ホルスタイン・ショーに対する私見を一つ。
酪農は、経営です。酪農家は、利益を得なければ生活できません。
ホルスタイン・ショーは、誰のために何を目的としたショーなのでしょうか。
ホルスタイン・ショーは、”“酪農家が儲かるウシを評価する”ショーなのではないでしょうか。
ホルスタイン・ショーで上位に入賞したウシを牛群に取り揃えたら、その牧場は確実に儲かる牧場になるでしょうか。
ホルスタイン・ショーは、単なる体型の良し悪しを比較するショーではなく、酪農家が儲かるウシの体型を評価するショーであるべきだと思うのです。
ショー 「ショーでの良いウシとは」 を参照ください。