私は長年にわたり、ホルスタインを観察してきましたが、最近のホルスタインの蹄は色が白くて小さく、かつ、蹄の側面が垂直になってきているような感じがしてなりません(写真1)(図1 右)。昔のホルスタインの蹄は、もっと色が黒くて大きく、側面が横に広がっていたように思います(写真2)(図1 左)。
この理由として、私は二つの理由を考えています。
一つは、ホルスタインの身体が改良の結果として大きくなっているのにもかかわらず、蹄が大きくならないため、相対的に蹄が小さく見えてしまう、ということです。
もう一つは、改良が進んできたため、改良の副作用というか負の要因というか、蹄が小さくなってきている、という見方です。私は、この理由を科学的に説明することはできませんが、ホルスタインの改良を目指してショーに出品している牧場の牛群としての蹄は白く小さく、失礼ながら、あまり改良に興味のない牧場の牛群としての蹄は黒く大きく感じるからです。
蹄の改良には、体型部位の遺伝評価に『蹄の大きさ』の形質がないため、酪農家としては対処できません。また、販売されている精液のほとんどが、遺伝形質の『高さ』の形質がプラスであるため、どの種雄牛を交配しても身体は大きくなってしまう、という問題もあります。
どちらの考え方が正しいか、あるいは他に理由があるのかはわかりませんが、このままの流れでホルスタインの身体が大きくなっていくと、そのうちに、蹄が身体を支えきれずに、短命に終わってしまうのではないかと危惧しています。
改良によって一産当りの産乳量が増えても、短命に終わったならば、生涯乳量は減少してしまいます。これが改良といえるかどうか疑問です。
この辺で一度立ち止まり、酪農界全体で、身体の大きさと蹄の問題について再考する時期ではないでしょうか。
余談ですが、ホルスタインの蹄のことを考えながら最近の大相撲を見ていると、同じような気がしてなりません。
関取の足の大きさは変わらないのに、上半身ばかりが大きく重くなっているため、瞬間的な動きのときに体重を支えきれずに横転して、怪我が多くなっているように感じるのです。言い過ぎでしょうか。