ホルスタイン・ショー **大きいことはいいことか**

皆さんに質問します。
ホルスタイン・ショー(ホルスタイン共進会とブラック・アンド・ホワイト・ショー)は、ホルスタインの何を評価して、誰のために出品牛の順位をつけるのでしょうか。

このことを考えたことがありますか?
そして、あなたの答えは?

改めてホルスタイン・ショーについて考えてみたいと思います。

ホルスタイン・ショーですから、評価の対象は当然ホルスタインのメス牛です。
その評価の基準としては、体型のすばらしい牛、見た目に美しい牛、乳をだしそうな牛、審査員が好む牛、などがあるでしょう。
誰のためとしては、出品牛を作出した人のため、出品した酪農家のため、審査員個人のため、観客のため、授精所(種雄牛の評価)のため、出品牛自身のため、などがあるでしょう。

それでは、審査員はどのような牛を誰のために評価するのでしょうか?

私の持論としては、ホルスタイン・ショーは「酪農家のために酪農家が儲かる牛」を評価するのでは、と思うのです。
体型とするならば、日本ホルスタイン登録協会による体型審査がありますから。

それでは、「酪農家が儲かる牛」とはどのような牛でしょうか。
私が思うに
第一に、乳をだす「乳用性」を持っていること。
しかし、たくさんの乳をだしても1産で終わってしまっては困るのです
そこで、第二に、長命連産に耐える「正確な骨格」を持っていること。
加えるに、人間は欲張りですから、牛が大きければもっと乳をだすだろうと想像して、
第三に、「大きい牛」、だと思うのです。

しかし、最近のショーの審査を見ていると、この逆で審査が行われているように感じるのです。

つまり第一に「大きさ」が評価され、第二に「骨格」が評価され、第三に「乳用性」が評価されると。

これは、日本の審査員は、よく北米の大きなショーを見学に行きます。
北米のショーを見学して、ホルスタインの大きさに感動を受けて帰国します。
その大きさへの感動が、審査に影響している一因なのではないでしょうか。

北米のホルスタインは、確かに大きいですが、それはただ大きいのではなく「乳用性」を持ち「正確な骨格」していて大きいのです。
私は、アルタ・ジェネティクス社精液の輸入業務を担当していた関係で、北米のショーでたびたび出品牛を触らせてもらいましたが、肋の皮膚の薄さと柔らかさ・乳房の皮膚の薄さやテクスチャーなど、それはすばらしいものでした。

もし、大きなホルスタイン・ショーで上位に入賞した牛を購入したら、一般的な繋ぎ牛舎で飼養できるでしょうか。多分、牛体が牛床よりも長く、バーンクリーナーに後肢を入れ不愉快な牛生を送っているのではないでしょうか。内地の牧場では、それほどたくさんの独房はありませんから。

現在販売されている精液は、そのほとんどが体高を高くする遺伝能力を持った種雄牛の精液であるため、どの種雄牛の精液を使用してもホルスタインは、継代ごとに大きくなっていきます。
日本ホルスタイン登録協会が発表しているホルスタイン種雌牛の推奨発育値の1995年版と2020年版の数値を比較したのが表1ですが、この25年で60ヶ月齢の成牛の体高は144.0㎝ から152.9㎝ と8.9㎝ 高くなっています。

酪農家の方々は、ホルスタインの大型化について、もっと大きくなれと思っているのか、もうこのへんでいいと思っているのか、もう少し小さいほうがいいと思っているのか、本音を知りたいものです。

ホルスタインの望むべき体型については、1年365日飼養管理をし、一日2回から3回の搾乳をしている酪農家が声を上げていかなければいけませんし、酪農界の関係者も現場の酪農家自身の声を聴いて、日本の目指すホルスタインに向けて審査していくことが必要なのでは、と思うのです。

今一度、ホルスタイン・ショーについて、初心に戻って考えてみるよい機会ではないでしょうか。