『乳用性』という言葉はよく使われます。
ホルスタイン・ショー(共進会)の審査講評においては「2位のウシが3位のウシよりも乳用性が勝っているので、この順位としました。」などと。
牧場の会話でも、審査講評でも頻繁に使われる『乳用性』とは、どういうことを言っているのでしょうか。『乳用性』という言葉は使っていますが、その意味を正確に説明できる人は、そんなに多くはいないでしょうし、人それぞれによって、説明が違うと思います。
私の見解を申します。
『乳用性』とは、英語のデイリー キャラクター(DAIRY CHARACTER)を翻訳したもので、「乳用牛として用いるに適した性質」だと思います。実に素晴らしい和訳ではないでしょうか。
それでは、「乳用牛として用いるに適した性質」とは何か、です。
昔の酪農家は、乳をよく出し長持ちするウシを、科学的な理由からではなく、失敗の積み重ねと牛体の細かい観察から得た経験で分かっていました。これが 経験則 です。そのため、乳をよく出し長生きするウシは、全て乳用性があるウシだったと思います。しかし、牛乳は人間の生活にとって大切な食品であるため、世界各国で乳牛の研究がなされ、科学的な理論として、乳牛が持つべき体型が調べられ、個々に独立してきました。これが 論理則 で、遺伝形質の体型部位です。
皆さんは、先人酪農家のように、ウシを細かく観察していますか。ウシを知る基本は観察です。ウシを観察し、触って覚えてください。
論理則は経験則から分離してきましたが、未だに理論で説明できない経験則があります。それが『乳用性』だと思うのです。
それでは、未だに理論では説明できない経験則である『乳用性』とは何かです。
それは、「首の細さ・長さ」「皮膚の薄さ・ゆとり」「被毛の細さ・柔らかさ・多さ」「首の皮膚にある縦しわ」「尻尾の細さ・長さ」だと思います。
今後、科学の益々の進歩によるDNAの解析などによって、上記の部位と乳量との関係が科学的に証明されていけば、証明された『乳用性』の部位は論理則に移って減っていき、全てが科学的に証明されたときには、『乳用性』の言葉さえ消えていくかも知れません。