世界初のツルー・タイプの製作者

ホルスタインには、その理想的な体型として、ツルー・タイプ(理想体型)が、酪農界の叡知を集めて各国で作られています。もちろん、ツルー・タイプは模型です。
ホルスタインの体型審査は、このツルー・タイプを100点として得点が決められます。

各国は各国でホルスタインに求めるものが少しずつ違いますので、ツルー・タイプも少しずつ違っています。ホルスタインに長命連産と泌乳量だけを求めるのか。あるいは、乳牛としての美しさを加味するのか、と言うように。

日本のツルー・タイプは成牛としての理想体型ですが、成牛と初産牛の二つのツルー・タイプを作っている国もあります。

それでは、世界で初めてツルー・タイプを製作した人は、どの国の誰でしょうか。

実は、世界で初めてツルー・タイプ製作した人は、日本人で川村吾蔵という人なのです。

川村吾蔵は、1884(明治17)年に長野県南佐久郡臼田村(現:佐久市)に生まれ、1904年20歳で渡米しニューヨークの美術学校に入学して彫刻を学びました。
1916(大正5)年に、ミネソタ州の酪農家フレッド・パブストを通じてホルスタインの理想的体型の製作を依頼されました。動物学者と共に全米各地の牧場はもとよりカナダ・メキシコまで出かけて研究し、1922(大正11)年、ホルスタインの理想的な模型を完成させました。(写真)
アメリカ・ホルスタイン協会は川村吾蔵が製作したツルー・タイプを複製して、全米の畜産系大学や海外のホルスタイン登録協会に提供し、酪農家には着彩されて販売されました。これによって、川村吾蔵は「牛のGOZO」と呼ばれるようになったのです。
1950(昭和25)年、65歳で死去。

世界で初めて製作されたホルスタインのツルー・タイプは、長野県佐久市にある佐久市川村吾蔵記念館に所蔵されており、2015年に北海道で開催された第14回全日本ホルスタイン共進会の会場で同館の協力により展示されました。

皆さまも、長野県佐久市の近郊に行かれた際は、是非とも、佐久市川村吾蔵記念館を訪問し、酪農界の先輩に敬意を示されるとともに、世界で初めてのツルー・タイプを見ることを勧めます。
そして、世界で初めてのツルー・タイプを見て、当時の理想とするホルスタインの体型が、改良の進んだ今の体型と違うことを実感してください。

佐久市川村吾蔵記念館
〒384-0412
長野県佐久市田口3112番地
Tel: 0267-81-5353
Fax: 0267-81-5355
e-mail: gozo@city.saku.nagano.jp
URL: http://www.city.saku.nagano.jp (佐久市HP内)

<参考資料>
「佐久市川村吾蔵記念館」パンフレット
酪農ジャーナル 2015年10月号
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