種雄牛成績の見方 ①育種価 と 伝達能力

皆さんは、DNAの二重ラセン構造の図を一度は勉強したことがあると思います。 これは、米国人のジェームス・ワトソンとフランシス・クリックが1953年に発見したもので、20世紀最大の発見といわれ、これを機に、分子生物学は急速な発展を遂げました。 なお、この発見に対し、1962年にジェームス・ワトソンとフランシス・クリックとモーリス・ウィルキンスの3人に、ノーベル生理学・医学賞が授与されました。

生物の体は、全てこのDNAで構成されており、オスでは、二重ラセンが精巣で減数分裂を起こして二本の精子 となり、メスでは、卵巣で減数分裂を起こして二本の卵子 となります。 そして、この一本の精子と一本の卵子が受精して二重ラセンとなって子供ができるのです。(図2)


ここで、皆さんが協力している後代検定による種雄牛の遺伝能力について考えてみます。
子供に遺伝する能力の表し方として、図2で見るように、父親としての 2n の能力と、精子としての n の能力 の 二とおりがあることがわかると思います。
  
父親としての 2n の遺伝能力を 推定育種価(EVB) と言い、精子としての nの遺伝能力を 推定伝達能力(PTA) と言います。
  
なお、EVB(推定育種価)は、Estimated Breeding Value の略であり、PTA(推定伝達能力)は、Predicted Transmitting Ability の略です。
  
2nの推定育種価とnの推定伝達能力のnの数の関係から、推定育種価は推定伝達能力の2倍の数値となります。
  
推定育種価 = 伝達能力 × 2
  
2n の 推定育種価 で数値を発表しているのが 日本 と カナダ であり、n の 推定伝達能力 で数値を発表しているのが アメリカ です。
  
推定育種価で表しますと、数値が推定伝達能力の2倍となるため、見た目には素晴らしい成績と写ります。
逆に、マイナスの数値の場合も2倍になるため、さえない数値になってしまいます。
  
授精所各社の 種雄牛案内(ブルブック)を見るときの注意点 を示します。
各国の種雄牛を国ごとに国内で比較する場合は問題がありません。
しかし、先に述べましたように、日本とカナダは2nの推定育種価であり、アメリカはnの推定伝達能力ですから、各国間の種雄牛の成績を比較する場合は、アメリカの成績を2倍して日本とカナダの成績と比較するか、逆に、日本とカナダの成績を半分にしてアメリカの成績と比較しなければいけません。 十分に注意してください。
  
ここで余談ですが、(株)野澤組が発表しているワールドワイドサイヤーズの種雄牛案内では、ワールドワイドサイヤーズがアメリカの授精所であるにもかかわらず、nの推定伝達能力ではなく、2nの推定育種価の数値で発表されています。
ですから、野澤組が輸入しているワールドワイドサイヤーズの数値は他のアメリカの授精所の数値の2倍になっていることに注意してください。このことを知らないで単純に比較すると、ワールドワイドサイヤーズの種雄牛の成績は素晴らしいと誤解してしまいます。
もちろん、小さい文字で「能力評価数値は推定育種価(EBV)で表示」と一応は記載されていますが、読む人はいないと思われます。