育成期間の重要性を認識しよう

ホルスタイン雌牛の生涯で、育成期間と言われる初産分娩までの生後約24ヶ月齢の管理は、極めて重要です。

ホルスタイン雌牛の月齢別の推奨発育値をみますと、表1のとおりです。(日本ホルスタイン登録協会 2020.03)

これを加工して、月齢別の成長と、その成長の生涯成長に対する割合をみたのが表2です。

表2の見方を「体高」で説明します.
体高は生後24ヶ月で生時の77.0㎝ から145.1㎝と68.1㎝ 成長します。この68.1㎝ の成長は生涯成長75.9㎝( 生時の77.0㎝ から60ヶ月の152.9㎝ まで )の89.7%にあたります。
尻長も腰角幅も同じ見方です。

この生涯成長に対する月齢別成長度合いの割合を示したのがグラフ1です。

このグラフからわかるように、ホルスタイン雌牛の成長は、高さ(体高)・長さ(尻長)・幅(腰角幅)の順になっていることがわかります。

また、グラフ2からわかるように、育成期間といわれる生後約24ヶ月齢で、体高は生涯成長に対する89.7 %、尻長は87.3 %、腰角幅は83.0 %と、高さ・長さ・幅ともに80%以上の成長をしてしまうのです。

これから、いかに育成期間の管理が大切かがわかると思います。

酪農家の皆さんの飼養管理を見ていますと、牛乳を出していない育成牛と乾乳牛よりも、収入の元となる牛乳を泌乳している泌乳牛をかわいがっているように見受けられます。その気持ちはわかりますが。
泌乳牛には良質な飼料を与え、牛床に敷いたオガコなどを毎日清掃していますが、育成牛と乾乳牛には泌乳牛の食べ残しの履きよせを与えたり、牛床は尿で濡れるまで放置しておくとか。

一方、人間を見てみましょう。
ウシの育成初期にあたる子供のときは、親の愛に包まれて温かい布団に寝かされ、学校に通う年代になると塾や習い事もさせてあげます。ウシの乾乳期にあたる妊娠末期は「胎児に影響がでるから過激な行動はするな」と優しく扱われ、「胎児の成長のため」として栄養のあるものを与えられます。そして、出産が終わると、姑から「グズグズしていないで働きなさい」と、ハッパをかけられます。

まったくウシとは逆ですよね。

では何故、人間の子供と妊婦は優しく扱われるのでしょうか。
その理由は、将来、子供や孫に面倒をみてもらう、という両親や祖父母の根端(こんたん)(たくらみ)があるからです。

ウシとて同じはずです。
育成牛は将来の分娩・泌乳のためにしっかりと身体を作らねばいけない時期であり、乾乳牛は分娩後の泌乳のために絨毛を再生する時期なのです。

もしウシが言葉をしゃべれたら、「泌乳していなくとも、ちゃんと扱ってくれよな。育成期と乾乳期にちゃんと扱ってくれたら、泌乳期にもっと乳をだして恩返しするのに。」と、言うかもしれません。

育成牛にも乾乳牛にも良質の飼料を与えて、将来の恩返しを期待してください。