ホルスタインの産乳能力に直結する『鋭角性』

“ 鋭角性 ”という言葉は、酪農界ではよく耳にする言葉ですが、実は、非常に難しい言葉です。失礼ながら、“ 鋭角性 ”という言葉を使っているものの、鋭角性を明確に理解し、他人が納得する説明をできる人は少ないのではないでしょうか。

 

日本には昔から、ホルスタインは三つのくさび(楔)形から成る、と言われてきました。三つのくさび形とは、前から見たくさび形、上から見たくさび形、横から見たくさび形です。現在は、ホルスタインが高泌乳能力を持つようになったため、心肺機能の強化から横から見たくさび形は重きをおかれなくなっています。

昔いわれていたくさび形が、最近では鋭角性の言葉に置き換わってきたようです。これは、英語の sharp の影響であろうと考えられます。

 

さて、鋭角という言葉を聞いて、ほとんどの人が最初に思い浮かぶのは、槍(やり)の先のように鋭くとがっている形、だと思います。

鋭角に対する言葉は鈍角です。鋭角が良いとすると、鈍角は悪いと思いがちですが、数学的に言いますと、鋭角とは90度未満の角度であり、鈍角とは90度を超え180度までの角度です。

牛体を前と上から見て90度を超えた角度を持ったウシはいないでしょうから、ウシは全て鋭角です。

 

鋭角で思い浮かぶのは槍の先、しかし、学問的には90度未満。実に難しい言葉です。

 

ホルスタインを前から見たときの鋭角性の底辺は胸底の幅となります。胸底幅の狭いウシは、見た目にも弱いウシとなります。

現在のホルスタインは、高泌乳能力を持っているため、心肺機能の充実として胸底幅のある強いウシが求められています。

上から見た鋭角性の底辺は尻の幅となります。尻の幅の狭いウシは、寛幅が狭く胎児の発育には不向きであり、座骨幅も狭く難産になる傾向があります。

座骨幅の狭さが初産に黒毛和種を交配するF1へとなるのです。

このように、頭に思い浮かぶ鋭角性には矛盾が付きまといます。

この矛盾をどう解決していくかです。
発想を転換して、” 鋭角性 ”とは、角度ではなく、余分な肉がついていないために、丸く見えずにとがって見えること、と理解すべきです。こう理解すれば、鋭角性も矛盾なく納得できませんか。

 

つまり、前から見た鋭角性とは、背に肉が付いていないこと。

上から見た鋭角性とは、肩に肉が付いていないこととなります。

 

乳牛は、摂取した栄養を牛乳に変換することが求められ、肉牛として肉にしてはいけないのです