搾乳性に関係する『前乳頭の配置』

『前乳頭の配置』は、前乳頭が各前分房の中央である分房の最底面(図1の縦の青線)に対して、どの位置に付いているかを見ます。

乳頭が各前分房の中央より内側に付いているのを「内付き」 (図2の右)、分房の中央より外側に付いているのを「外付き」 (図2の左)と表現します。

『前乳頭の配置』は、乳頭が各分房の中央に対してどの位置に付いているかを評価することであって、乳頭が向いている方向は考慮しません。(図3)
なお、乳頭が真っ直ぐ下を向いている状態を専門用語で「垂下(すいか)している」と言います。

『前乳頭の配置』は、搾乳器の付け易すさに関係します。

『前乳頭の配置』は、外付きよりも内付きのほうが好ましいため、「内付き」 がプラス、「外付き」 がマイナスと評価されます。しかし、実際には中央が最も良い位置であるため、この部位も線形の評価値では、プラスでもマイナスでもないゼロが最も評価の良い部位となります。

乳房は、産次が進むに従って中央懸垂靭帯が徐々に弱まり、乳房が下がってきます。中央懸垂靭帯が弱まるということは、乳房間溝が浅くなってくることを意味します(図4の左図の緑の幅)。しかし、乳房底面の乳房間溝が浅くなっても乳房間溝の中央と乳頭の付け根の距離は変わらないため(図4の左図の青線の長さ)、乳頭は徐々に外付きになってきます(図4の左図の橙色)。産次が進んでも乳頭を分房の中央付近に置くためには(図4の右下図の橙色)、初産での乳頭の配置は、若干、「内付き」 のほうが良いことになります(図4の右図の上図)。

標準化伝達能力で、プラスよりもゼロがいい部位は、『前・後乳頭の配置』の他にもあります。
それは、『乳房の深さ』・『乳頭の長さ』・『後肢側望』・『尻の角度』 です。

『乳房の深さ』は、浅すぎると(プラス)乳房が小さくなりますし、深すぎると(マイナス)乳房が汚れたり、ウシが起立時に乳頭を損傷する恐れがでてきます。
『乳頭の長さ』は、あまり長すぎると(プラス)ウシが起立するとき、乳頭を損傷する危険がありますし、短すぎると(マイナス)、搾乳器の装着が困難になります。
『後肢側望』は、直飛(プラス)でも曲飛(マイナス)でも、ホルスタインの運動機能によくありません。
『尻の角度』は、斜尻(プラス)は見た目によくありませんし、ハイピン(マイナス)は難産の傾向となります。