現在のホルスタインの乳量は、精液を供給する授精所の努力と酪農家の皆さまの協力による後代検定によって、高能力の種雄牛が作出・選抜されているため、年々増加しています。
1984年から2022年までの都府県の乳量の伸びは表1のとおりです。(社団法人 家畜改良事業団)
ここ30年で2,069 Kg、20年で833 Kg、10年で492 Kg増加しています。
一方、同じ期間の分娩間隔は表2のとおりで、これまた年々大きくなってきています。(社団法人 家畜改良事業団)
ここ30年で19日長くなりました。しかし、この20年で2日、10年では7日短くなっています。これは、給与する栄養の改善とサプリメント給与の効果と思われます。ただし、2022年の439日は14.6ケ月ですから、酪農界が目標とする1年1産には、まだまだの数値です。
2011年前後の数値をみるとわかるように、2011年の分娩間隔449日は異常値と思われるほどに長くなっています。これは天候の影響もあるのかも知れないと、気象庁発表の「2011年の日本の天候」を見たところ、「夏と秋は全国的に高温であった」とあります。すべてではないでしょうが、分娩間隔の数値に気候が大きく影響しているのは間違いないでしょう。
また、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻で、穀倉地帯であるウクライナからの穀物輸出がとどこおり、穀物価格が暴騰したことによる飼料価格の上昇に伴い、酪農家の皆さんは給与飼料を多少なりとも変更せざるをえなくなっているのが現状です。
加えるに、2023年度は猛暑でした。この給与飼料の変更と猛暑が分娩間隔にどのような影響を及ぼすか、今後とも注視していかなければなりません。
泌乳の検定成績と分娩間隔の両方のデータをグラフ化たのが図1です。
両グラフは酷似しており、1984年から2022年までの39年間の相関係数を調べますと、なんと0.97となります。
完全な相関の場合の相関係数は1.00ですから、0.97は、乳量と分娩間隔がほぼ完全な相関関係にあると考えてもよいでしょう。(ちなみに、1984年から2019年までの36年間の相関係数は、計算上 1.00 となります。)
これは何を意味するかです。
ホルスタインは本能によって、自分の身を削ってでも能力の限界まで乳を生産します。しかし、生産する乳に伴った栄養が摂取できてない。そのことによってホルスタインの栄養バランス・ホルモンバランスが崩れ、受胎可能な体調の回復までに時間がかかることによって分娩間隔が伸びてくる。このように考えるのが正しい推論ではないでしょうか。
種雄牛の能力の向上によって、生まれてくるメス牛の潜在能力は向上しています。
一方、メス牛の潜在能力の向上を意に介さず、昔ながらの栄養・飼養管理を続けている。これではいけないのです。
ホルスタインの日々の状態を観察し、栄養・飼養管理の改善に気を配り、最適の状態でホルスタインの持って生まれた潜在能力を引き出して、稼いでいく。これが酪農経営の基本ではないでしょうか。
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