ホルスタインの種雄牛の選択について(搾り専門酪農家)

種雄牛には二つのタイプがあります。
一つは、産乳能力の改良に優れた種雄牛で、これを“能力タイプ”といいます。
もう一つは、ショー(共進会)に強い体型の改良に優れた種雄牛で、これを“ショー・タイプ”といいます。

“ショー・タイプ”の種雄牛は、体型の改良には力を発揮しますが、一般的に、産乳能力の改良には劣ります。

それでは、どちらの種雄牛を選択するかです。

私は、酪農家には三種類の経営タイプがあると思っています。
一つは、血統のよい雌牛を所有し、生産したメス子牛の販売を主体とする酪農家。このタイプをブリーダーといいます。
二つ目は、搾り[しぼり]主体ではあるがショー(共進会)に出品する酪農家。
三つ目は、搾り主体でショー(共進会)に興味のない酪農家。このタイプをコマーシャル・デーリーといいます。

ブリーダーの方とショー(共進会)に出品される方は、体型が勝負ですので、“ショー・タイプ”の種雄牛を使用しているでしょうから、ここでは、コマーシャル・デーリーの方の種雄牛の選択について話します。

コマーシャル・デーリーの方は、産乳能力の向上を求めて、多分、能力タイプの種雄牛を使い続けていると思います。種雄牛を選ぶのが牧場主ではなく、獣医師や授精師にまかせてあっても。
しかし、能力タイプの種雄牛を使い続けていると、体型がくずれてしまいコマーシャル・デーリーの酪農家が求めている、経営の根幹である長命連産に耐えられなくなってしまいます。

産乳能力の向上を追求しながらも長命連産を求めたいコマーシャル・デーリーの酪農家は、この課題に対してどう対処するかです。
その対処法として、三世代に一度、ショー・タイプの種雄牛を交配することを推奨します。(図1)

三世代に一度とは、二世代能力タイプの種雄牛を交配したら、三世代目にはショー・タイプを交配することです。三世代目にショー・タイプの種雄牛を交配することによって、長命連産に耐え得る体型を取り戻す。その交配を繰り返すことによって、体型を戻して長命連産を保ちつつ産乳能力を維持できます。

なぜ、三世代目ごとにショー・タイプの種雄牛を交配するかというと、二世代目ごとでは産乳能力の向上がそれほど期待できないこと。四世代目ごとと長引くと長命連産に耐える体型が崩れてしまうからです。

間違えないでいただきたいのは、三世代目であって、三産目ではないことです。同じ母親からの子は、世代は同じ兄弟姉妹です。(図2)

同じ母親には、何産であっても同じタイプの種雄牛を交配することです。(図3)

なお、現在いるメス牛の母親と祖母の父親のタイプがわからないときは、ショー・タイプの種雄牛を交配して、一旦、体型を整えたほうがいいと思います。