クローンを作製する技術には、クローンの元となる細胞の種類によって、二つの種類があります。
① 一つは、精子と卵子が受精して分裂を始めた初期の胚を用いる方法で、受精卵に由来することから、『受精卵クローン技術』と言います。
② 二つ目は、ウシの乳腺細胞や皮膚などの体細胞を用いる方法で、『体細胞クローン技術』と言います。
これらのクローン技術を図1によって説明します。
① 『受精卵クローン技術』ですが、精子と卵子が受精すると(図1の1-1)、受精卵は分裂をはじめ、2、4、8,16と倍々で細胞数を増やしていきます(図1の1-2)。
クローン作製には受精後 5~6日目で、16~32細胞へ分裂が進んだ受精卵を使います。これ以上分裂が進んだ受精卵は、現在の技術ではクローンにすることができません。
この受精卵は、メス牛に人工授精して、受精 5~6日後に子宮から洗い流して回収した受精卵でも、体外授精した受精卵でもかまいません。
16~32細胞へ分裂した受精卵を覆う膜(これを「透明帯」といいます)を切り、細胞を一つ一つに分離します(分離した一つの細胞を「割球」と言います)(図1の1-3)。
一方、屠場などで採取したウシの卵巣から回収した卵子から、レシピエント卵子とするため核を除去します(図1の2-1)。
ついで、割球から受精卵の核を吸引し(図1の1-4)、核を除去したレシピエント卵子に挿入します(図1の2-2)。
② 次に、『体細胞クローン技術』です。
『体細胞クローン技術』は、クローンを作製したいウシの乳腺細胞や皮膚から体細胞を取り((図1の3-1)、培養し、体細胞を一つ一つに分離します(図1の3-2)。
体細胞を培養するときの培養液は、通常の血清濃度の 1/20 にします。この培養濃度によって全能性を回復します。
分離した細胞から核を吸引します(図1の3-3)。
ついで、細胞から吸引した核を、核を除去したレシピエント卵子に挿入します(図1の2-2)。
以後の操作は、『受精卵クローン技術』でも『体細胞クローン技術』でも、同じ操作となります。
核を挿入したレシピエント卵子に電気刺激を加え、移植した核とレシピエント卵子の細胞質とを融合させます(図1の2-3)。
電気刺激で融合させたレシピエント細胞を培養します(図1の2-4)。
培養すると、核移植した受精卵は、図2のように、2、4、8と倍々で分裂増殖していきます。分裂が進み、培養後 7~8日経過して、桑実胚から胚盤胞まで発生した受精卵を(図2の青囲み)、レシピエントとなる借腹牛へ移植します。受精卵移植と同じです。