F1とは、First filial generation の略で、filial (第・・代)の F にfirst(1)の1で F1と略され、雑種第一代といいます。
雑種第一代とは、異なる品種の交配によって生まれた個体で、その個体は雑種強勢の特徴があります。
雑種強勢とは、ヘテローシスともいい、両親のいいとこ取りをすることで、野菜では、両親にくらべて収量が多いとか、強健であるなどです。
しかし、残念なことは、遺伝子が混在するため次世代の親にはなれないことです。もちろん、雑種第一代でも生殖機能は正常ですから繁殖はできますが、遺伝子が混在するため子供の遺伝子型がバラバラになり一定の収量が期待できないためです。
親になれないということは、野菜農家は自家繁殖で種子をとれないこととなり、毎年、種子を購入しなければならないのです。このことによって、「種子を制するものは世界を制す。」との言葉があるように、種苗会社は雑種第一代の作出に必死に取り組んでいるのです。
しかし、日本の酪農界におけるF1はまったく違います。日本の酪農界のF1は、乳牛のメスのホルスタインと肉牛の黒毛和種のオスとの交配で、乳牛と肉牛のいいとこ取りとしての乳肉兼用種の作出ではなく、あくまで肉用素牛です。
ではなぜ、日本では乳牛のホルスタインと肉牛の黒毛和種とのF1が下の表からわかるように、かくも盛んに行われているのでしょうか。
その理由としては、ホルスタインの初産分娩を楽にしたいことと、日本人の牛肉の霜降り好みにあるのでしょう。
ホルスタインの初産分娩を楽にしたい。その理由は?
それは、ホルスタインの特に未経産牛の座骨幅が狭く、難産になり易いため、ホルスタインよりも小柄な黒毛和種を交配することによって、産子が小さいF1に逃げているのです。
小さい産子を望むのであるならば、分娩子牛が小さい安産度の高い、あるいは難産度の低い種雄牛を選んで交配すればいいのです。
いや、それよりも、座骨幅の広いホルスタインを作ればいいのです。
遺伝形質において、安産度の高い、あるいは難産度の低い、座骨幅の広いなどは、皆さん酪農家が協力している後代検定の結果としてデータが発表されていますので、活用していかなければ損でしょう。
なお、最近の黒毛和種は、肉量を増やすため、以前に比べて大型になっていますので、F1といえども思わぬ大きな産子で難産になるときがあるので注意が必要です。
また、このままの高い割合でF1が行われると、ホルスタイン雌牛が不足していくでしょう。
自分の牧場の後継牛は、自家産でまかなう心意気で経営を行うことを勧めます。