ホルスタインの分娩難易に関係する『尻の角度』

『 尻の角度 』とは、腰角に対して座骨がどの高さにあるかを見ます。(図1)

座骨が腰角より上にあるものを“ ハイピン ”、座骨が腰角よりもかなり下にあるものを“ 斜尻 ”といいます。(図2)

“ ハイピン ”に“ 斜尻 ”と、相反する状態を英語と日本語で使い分けているのは、この部位だけです。

ハイピン ”ですと、座骨が上にくることによって膣が引き上げられて子宮頸管との間に角度がつくため、授精器が挿入しにくくなりますし、なおかつ膣が扁平になって難産になりやすくなります。また、肛門も引き上げられて上を向くため、排糞のときに膣を汚しやすく尿膣を起こしやすいなど、いい点はありません。
一方、“ 斜尻 ”ですが、自然界の野生の動物の尻の角度を見ると、すべての動物が斜尻です。自然界の厳しい生存競争のなかで、早く分娩をすませるとか、天敵からの逃走のために早く走るためには斜尻がいいのです。走るのが早いチーター・トラ・競馬馬などは、すごい斜尻です。ただ、あまり歩かないホルスタインには、斜尻は少し見栄えが悪いかな、というくらいで生理的にはまったく問題はありません。ショーの審査でも、斜尻で評価が下がることはありません。

よって、ホルスタインの『 尻の角度 』の評価は、斜尻でもハイピンでもなく、適度な角度が一番良いとされます。これを線形で評価すると、真ん中のゼロが推奨されることとなります。

人間の一般的な感覚からすると、右肩上がりの言葉で表されるように、数字的にはプラスが良い感じがしますが、ゼロがよく、プラスもマイナスもよくないとの見方もあるのです。

標準化伝達能力で、プラスよりもゼロがいい部位は、『 尻の角度 』 の他にもあります。
それは、乳房の深さ・前・後乳頭の配置・乳頭の長さ・後肢側望 です。

『乳房の深さ』は、浅すぎると(プラス)乳房が小さくなりますし、深すぎると(マイナス)乳房が汚れたり、起立時に乳頭を損傷する恐れがでてきます。
『前・後乳頭の配置』は、内付き(プラス)でも外付き(マイナス)でも、搾乳器の装着が面倒になります。
『乳頭の長さ』は、短い(マイナス)よりも長い(プラス))ほうがいいですが、長すぎるとウシが起立するとき、乳頭を損傷する危険がありますし、短すぎると搾乳器の装着が困難でありますし、搾乳器がうまく装着されずに空気を吸い込んでしまうこともあります。
『後肢側望』は、曲飛(プラス)でも直飛(マイナス)でも、ホルスタインの運動機能と耐久性によくありません。