ホルスタイン共進会(BWショー)の命綱である頭絡(ストラップ)②使用目的

皆さんに、「ショー・リングでの、頭絡(ストラップ)の使用目的は何だと思いますか。」と質問すれば、ほとんどの方は、「リングでウシをコントロールするため。」と答えると思います。
確かに、リングでウシをコントロールすることも頭絡の使用目的の一つであることに間違いはありませんが、それは従属的な使用目的です。

本当の目的は、ウシが暴れたときに、自分を、他のウシとリード・パーソンを、審査員を、そして観客を、暴走するウシから守ることなのです。

最近、俺のウシはおとなしい、完全に調教してある、と自負しているのか、あるいはリードによほど自信があるのか、または、格好が良いと思っているのかは知りませんが、皮製のリード・ストラップをつけないでチェーン・ストラップだけでウシをリードしている人を見かけますが、これはウシの本当の怖さを知らない馬鹿か素人のやることです。ショーマンシップを持った皆さんは、リード・ストラップを必ず着けるように 心がけてください。

なぜならば、リード・ストラップは最後の保身具 だからです。使わないことに越したことはありませんが、最後の保身具を装備しておくのが出品者のマナーであると認識してください。

どんなに調教したとの自信があっても、また、どんなにリードに自負心を持っていても、相手は畜生です。リング内においていつ何時、物音等にビックリして暴れだすかは保証の限りではありません。もし、ウシが暴れたら、あの短いチェーン・ストラップだけでは、決してウシを制御できないことを皆さんご存知のことと思います。

ウシが暴れて物にぶつかってそのウシが傷つく、あるいは、そのウシのリード・パーソンが、ウシが暴れた勢いで倒されたり、ウシを制御できなくなって引きずられたりして傷つくことは自業自得です。しかし、ウシが他の出品牛あるいは他のリード・パーソンや審査員を傷つけたら大変です。まして、暴れたウシがリングと観客席とを分けている柵を飛び越えて観客席に飛び込み、観客を傷つけたらどうなりますか(市町村単位のショーでは柵さえないところがあります)。警察や報道関係の記者達は傷害事件の情報収集として、ショーの事務局やショー会場の管理者に、ショーの安全管理に問題はなかったかどうかをしつこく聞き取り、新聞・テレビで騒ぎ立てることでしょう。場合によっては、裁判沙汰になるかも知れません。こうなれば今の時代、ショー会場の所有者あるいは管理者はホルスタイン・ショーでの会場使用を断ります。その結果、多分、その地域でのホルスタイン・ショーは、以後、開催中止に追い込まれてしまうでしょう。(ショー会場の代替地として、ウシの糞尿の問題がなく、ウシを運ぶ大型トラックが通れる道路に面した広い場所は、地域においてそれ程多くはありません。)

酪農家の皆さんにとって楽しみなショーを、一人の不注意から開催中止にさせることは決して許されることではありません。必ず皮製のリード・ストラップは装着してください。

ショーを開催する事務局は、ショーの開催要項に「出場牛は、必ず頭絡にリード・ストラップを装着すること。」等の一文を載せるべきでしょう。

自分のウシが暴れずにショーが終わったとしたら、それは運よく、たまたま暴れなかっただけで、次のショーでは暴れるかどうかわからない、と認識すべきです。